バレンタインデーのエピソード「中学生の思い出編」

2019年2月6日恋愛,畠山慧美さん

バレンタインデーのエピソード「中学生の思い出」

私たちの中学生の頃のバレンタインデーには、「本気」しかなかった。

先生にあげるという地味な義理はあったが、仮に「義理」でどうでもいい男子にまで配ると、変な噂が立ち、その男子は今でいうとストーカーになり(田舎の純朴な少年ですけん)毎日家に送り迎えに行ってしまう状態になるので、絶対タブーだった。

うちのクラスは、みんな仲が良かった。だからって、男子23人全員に配ることもなく、仲良しだからって「好き」っていう恋愛感情はなくって、逆に他のクラスにこそ好きな男子がいることが当たり前だった。クラスが家族のようで、きょうだい感覚だったからかも。

さて。私には、何人か仲良しの男子がいた。いや、23人全員と仲良しだった。つまり、女子とは認められてなかったのかも。

で、一緒に生活係=パン購入係をしていた松本くんは、特に仲良しだった。

松本くんは、ひろみ郷にとても似ていて、野球部のエースで、女子にかなり人気があったが、意外とシャイで奥手だっただったために、特に付き合ってる女子はいなかった。私は内心「男前なのに、なんで彼女をつくらないんだ、こいつ」と思っていた。

(規則では禁止されていたが)時々私にお菓子をくれたり、パンの箱を一人で持ってくれたり、非常に親切なナイスガイだった。

バレンタインデーの日。クラスで一番太っているけど、全く自覚のないノリコからチョコレートを託された。「松本くんに、お願い」。

自分のチョコレートは渡せない私だったが、バレンタインデーの日は、恥ずかしがり屋さんの女子から、サッカー部の〇〇くんへ、ブラスバンド部の××くんへ、と代理でお渡し業にとても忙しかった。これも、うちのクラスだけでなく、学年の男子一同に女子扱いされていないからできたことだと思う。

野球部の汚い部室の戸をノックした。「松本、お願いします」。

松本くんは、今まで見たことのないような満面の笑みで、部室の奥から登場した。

そして、「これ、おめえがらか?」と言った。

「違うよ。ノリコからだよ」
「ノリコって、あのデブの?」
「そうだよ。あんだんどご大好きなんだって。だからさ、少しでも付き合っていいと思うなら受け取って。でも、まったく感情がない場合は、そう言うから受け取んないで。どっちにする?」。

松本くんは一瞬泣きそうな顔になった。「いやだったら、受け取らなくっていいって」。

でも、きっとはじめてチョコレートをもらったことと、ノリコのことを好きではないということを天秤にかけてみると、家に帰って1個でももらったということの方が大きかったんだと思う。

「いいです!、いただきます」。松本くんは、ノリコのチョコレートを受け取った。これで私の役目も終わった。

その後、ノリコが松本くんと付き合ったかというと、松本くんはノリコを見かけるとダッシュで逃げていたし、2か月も経たないうちにクラス替えがあって、二人は、1組と11組という両極端に離れてしまった。中学生の恋なんてそんなもんだろう。

何十年かしてクラス会が開かれた。

よくある「君が初恋の人だったんだよ」というくだらないありもしない話は、うちのクラスでは発せられない。それがどれだけ嘘か、当時誰が誰を好きだったか知っているから、言わない。

久しぶりに松本くんも参加した…ノリコは来なかった。しぶいオジサンになっていた。生活係同士私たちは、会えなかった時間を埋めるように機関銃のように話をした。

そして、バレンタインの話になった。

「あの時、チョコレート、おめえがらかと思ったんだぞ」
「またまた~」
「いや、マジで」。

そう言われると、あの美少年だった松本くんの好きだった子は知らない。奥手だと思っていたから、追求しなかったのかもしれない。

オレ、おめえが好きだったんだ
「またまた~」
「マジでマジで」。

ああ、あの一瞬見せた、満面の笑みと、ひどい落胆の表情は…。だから、パンの箱を持ってくれたりしたのか~。

「言えばよかったのに」
「だっておめえは、バスケ部の水野くん好きだったんだべ~」
「それ言わないで、私の恥部だから」。

一言匂わせてくれたら、ちょっとは交際したんだけどな、松本くん。

「オレ、デブは嫌いだから」。

現在の私は、当時のノリコよりも立派なデブである。もう、なにも始まらない。

今、松本くんは、妻みどり一筋。みどりは、横綱級の体格らしい。

あはは。近くおじいちゃんになる予定だそうだ。孫に、どんどん、チョコレート横流ししてもらう、イケメンのおじいちゃんになってね。


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