橋のたもとの少年・①
橋のたもとの少年・①
卒業式が終わった。PTAの関係者以外のすべての行事が終わった。
私たちは外に出た。別れを惜しんで校門のところで、みんなで溜まっていた。
もちろん、それには、男子が誰からか第二ボタンをもらいたいと言われるか、また女子が好きな男子から第二ボタンをゲットするか、そのための余韻の時間だった。
私はどうしても、意地が強い。自分を道化にできない。
「ワタシガシツレンスルナンテアリエナイ」。
大好きだった少年が、校門を出た向いにある橋のたもとに立っていた。
私を待っていたのかもしれない。
私たちはお互いに「好き」と確認したわけではないけど、心は通じていた。
でも、私は、仲のいい男子たちとくだらないことをしゃべっていた。
誰からもボタンを欲しがられる予定のない彼らから、「ボタンあげっから」「いらな~い」とか話していた。
でも、視線は、橋のたもとにいる彼を見ていた。
橋のたもとにいた彼には、いくつもの後輩の集団がボタンをもらいに行った。
そして肩を落として泣きながら戻ってきた。
彼は、誰にもボタンをあげなかった。
彼の元に行けばよかった。
でも、
私は、
「きみにもあげない」と言われることが怖かった。
1時間も経っただろうか。
彼は踵を返して、家に向かってまっすぐ帰って行った。
追いかければ、
追いかけなければ。
できなかった。
おばさんになった私。
今でもその光景の夢を見る。
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