雪とキーホルダーと、渡せなかった抹茶チョコ。
雪とキーホルダーと、渡せなかった抹茶チョコ。
毎年この時期が来ると、思い出す。
あたしの悪いとこを覆い尽くすような真っ白い雪と、キーホルダーと、抹茶チョコ。
渡さなかったんじゃない、渡せなかったんだ。
ー
出会いはふとした瞬間だった。
高校2年の冬、ちょっとしたことで先生に職員室に呼ばれた。
(※先生と生徒のいけない恋愛の話ではないので、あしからず)
ピアスのこととかスカートのこととか色々言われたけど、そんな時。
(雪国の学校だったからか、スカートが短すぎると凍傷を起こす!っていう謎の怒られ方をした)
あたしの後から入ってきたのに、あたしの3倍くらい怒られている男の子がいた。
学年バッジは1年生。
見たことないけど、後輩くんだった。
先生に話を聞いてみたら、
・校則違反
・テストの前に脱走
・遅刻の常習
・金髪
で、逆に学校に来ているだけでも褒められるぐらいの子だったんだって。
一緒に怒られていると吊り橋効果っていうのかな?なんか怒られながら二人で笑った。
先生から怒られた後だから友達もみんなバイトとか部活にいっちゃってて、なんとなくその子と一緒に帰ることにした。
ー
彼とはすごい話もあって、ヤンキーっぽかったんだけど、どっか放っておけなくて、しかも年下。高校の時の「いっこ下」はデカい。落ちた。。。
向こうもなんとなく一緒にいて楽しいって笑ってくれて、高校生あるあるなんだけど、一気に燃え上がった。
ー
時期はちょうど今くらい、バレンタインの直前で、あたしはそのコにチョコを渡そうと思った。ある日の学校帰り、地元のショッピングモールでチョコを選んでいたら
「誰に渡すの?」
って、タメ口で話しかけてきた、悪い後輩(金髪)。
「教える訳ないじゃん!w」
って言いながらチョコを戻して、なんとなく流れで一緒に雑貨屋さんとかを見て回った。
当時はスワロフスキーを使ったイニシャルのキーホルダー(歳バレるねこれ)とかが流行りで、お互いのイニシャルのキーホルダーを買って意味ありげに携帯につけた。
もう完全にカップルじゃん!
久しぶりにこんな気持ちになって、バレンタインの時には手作りチョコと思ったけど、先輩が手作りチョコって言うのもなんとなく・・・と思って、恥ずかしさを紛らわすように抹茶のホワイトチョコにした。680円(税抜)。
ー
バレンタインデー、当日。
音もなく雪が降っていた。
雪が降りすぎて、電車も止まったらしい。
携帯が光った。ひらく。
後輩からのメールと着信。50件くらい。
そうだよね、バレンタインの放課後は一緒にカラオケに遊びに行こうって、約束してたもんね。
ごめんね。
でも、やっぱりあたし、君にチョコ渡せそうにない。
「誰とメールしてんの?」
彼氏が言う。
「別に?メルマガw」
「ふーん。それよりさ、せっかくゲーセンに来たんだからプリ撮ろうよ!」
ー
ごめんね。
遊んでたわけじゃない。
気の迷いっていうことも確かにあった。
でも君は君で、大事だった。
結局君はそのあと、何かを察したのか一切メールも電話もしてこなくなったね。
学校ですれ違っても、目も合わせてくれなくなった。
誰かから聞いたのかな。
あたしに、彼氏が、いるって。
ー
あれから15年くらいになるかな?
今でも雪が降ると思い出す。
雪と、学校と、キーホルダーと、抹茶チョコ。
大人になってから、GODIVA、カカオサンパカ、ジャンポール・エヴァン、HIRSINGER、いろんな高級チョコを渡してきた。本気で選んだりもした。
でも、そのどれも、あの時の680円の抹茶チョコには勝てない。
どうか、元気にしていますように。
どうか、可愛い奥さんと結婚していますように。
あたしの過去を覆い隠すように、今年もまた、真っ白な雪が降る。
そんなほろ苦い、バレンタインの思い出。
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